[読書]

 『神戸在住』1〜5巻を読んだ。最初はタイトルが気になって買っただけ(神戸出身なので)で、内容はほとんど気にしていなかったのだけれど、以外に面白いと気がついた。
 なんだかこの主人公、北村薫の『円紫さんと私』シリーズの主人公の『私』と凄く似ている。
 文学的趣味がある、綺麗なモノローグ(言葉遣い)、性格なんかの割と部分的なところは言わずもがな、その感受性のようなところが特に似ていると言う印象を受ける。この『かつらっち』も、『私』も、何かに感情を揺さぶられるという描写が所々に出てくるけれど、その揺さぶられる対象も、それによって起きる感情も特に目新しいところは無いに等しい。その感情そのものもどこかで一度かそれ以上耳にしたことのあるであろう表現である。
 けれど、そこでありきたりのつまらない作品とならないのには理由があるように思う。何というか、ド演歌的ではないように思う。彼女達は、それほどコテコテに周りの情景や、その影響を与える人たちとつながっていない。哀しみも、日々の楽しみも、どこか彼女達の立脚点から遊離している印象を与える。生々しさは余り無い。北村薫作品にあったように、『結晶のような』存在なのだ。
 それを魅力的ととるか、ありえないとして切り捨てるかは、そのときの気分次第かな…。